今日あらゆるものの価値観が見直されているように感じます。人類が営々と築き上げ求めてきた成長系の社会・経済活動が、実は自らの環境破壊と世界の南北経済格差の助長という閉鎖系の壁の存在と隣り合わせであることに気づかされました。               家族のあり方にも急速な変化が感じられます。かつての大家族住宅には主婦や老人をはじめとした終日を家ですごす“全日制住人”が多くいました。核家族化が進み共働き夫婦も増えた今日では、子供たちも学校や塾通いに忙しく、住宅はただ食事と眠りに帰るだけという“定時制住人”が多くなってきました。年の節目の歳時の習慣も崩れ、家族が協力して家事を分担したり地域の人々と連携して行事をこなすような機会もめっきり少なくなりました。世代を超えた家族の絆を感じるチャンスも薄れ、いまや家庭は単なる家族の合宿場に成り下がってしまいました。いまこそ家庭本来の意義を見直し、一日の癒しと明日への充電を担う安らぎの退避場として、また戦士(?)の結束を深め合える憩いの場としての住宅を取り戻さなければならないと思います。四季の移ろいを感じつつ自然の恵みのエネルギーを享受できること。時が経つごとに味わいが出て美しく古び(美)ゆく。そんな自然素材に囲まれた家族の価値観を体現できる不動の母性に包まれた家づくりが求められていると思います。そのためにも石や土、水に火(炎)、それに木(植物)など素材にじかに触れる仕掛けが“住まい”にあることも有効だと思います。いづれにしても現代の都市生活者にとってスローライフをその本質で実践することは無理でしょうが、省エネ、リサイクル、サスティナブルといったキーワードをよりどころに疑似体験して満足するほかないように思われます。

パトス建築設計室 代表
岡田典久